徹夜した翌日朝寝坊を決め込む。“朝寝坊” ですらないです、起きたら起き。差し引きゼロですな。季節の変わり目の朝には空想が飾り立てた思い出が時間相応に風化した過去として胸に届く。
個人的でささやかな贅沢に関していつも思い出すことがある。
物心ついてから部活を始めるまで私は図書館に入り浸っていた。お気に入りの窓際の席でまる一日を過ごした。友達が家に遊びに来ると母は図書館じゃないかしら、という。そう言われて “またかよ~” と迎えに来た彼らの顔を覚えている。こっちも “またかよ~” と思い遊びに行く。小学生の間に世界中の昔話と空想小説は大久保図書館にある限り読み尽くした。
休日に家にいたのだからあれは私が小学生の時のことだと思う。図書館で面白い本が見つかりわくわくしていた。いつもは制限いっぱいでなくては何かもったいなくて 10冊借りるのにその日は選りすぐりの10冊。朝から重い曇り空ではあったけど運良く私が家に帰った途端に降りだした。音をたてて降る雨に閉じ込められる 感じが好きで、即ソファーに陣取って読み始めた。確か魔女の話だったと思う。しばらくして母が帰ってきた。妹が二階から下りてきた。父は仕事、弟はどこかに遊びに行っていた。母はケーキを買ってきたらしく “じゃあ女三人で食べましょうか” と言う。
女三人。
母の秘密めいた言い方に惹かれ本を閉じ、雨のせいで薄暗い午後の居間でケーキを食べる。続きが読みたくてたまらない本と降り込められた我が家。運良く雨を逃れた自分。そして “女三人” のケーキ。それ以上欲しい物は考えつかなかったので私は “あ、幸福だ。” と思った。というお話でした。
November 1, 2007
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
2 comments:
すごい文才ですね。うらやましいです!
楽しく読ませて頂きました。
小さな幸福はやっぱり身近なモノからの優しさですね
>omochi
The way to make your life happy is to surround yourself with people who love you.
とさっきスカイが言っていました。一番身近にあるものを take advantage してはいけませんね。
という時の take advantage はどうやって訳せばいいのだろうか。
Post a Comment